新しい出生前検査の種類

最新2種法の要約

2014年の春に新型出生前検査(NIPT)が導入されて大きな話題を呼びました。

 

歓迎の声、命の選別を巡る倫理の問題、高額な費用と受診年齢制限の是非・・・など。

 

しかし、秋にはさらに新たな出生前検査が登場して、混同される方も増えているので、最初にこの2つの最新手法について整理します。

 

2014年秋導入の手法
  • 受診対象: 妊娠11週以降で年齢制限なし
  • 検査費用: 2万5千円
  • 検査方法: 採血と超音波(NT測定)を組み合わせる
  • わかる異常: ダウン症(21トリソミー)と18トリソミー
  • 検査精度: 80%程度
2014年春導入の手法(NIPT)
  • 受診対象: 妊娠10週以降で原則35歳以上でないと受診資格なし
  • 検査費用: 21万円
  • わかる異常: ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3種
  • 検査精度: 80〜90%程度、陰性的中率は99.9%以上

 

NIPTの問題は高額な費用と年齢制限でした。

 

検査導入の趣旨は、高齢出産で増える先天異常の検出。

 

それが広く使われて命の選別が過剰に進むのを避ける意味で年齢制限が設けられているのです。

 

一方、2014年秋からの手法は昭和大をはじめとする少数の医療機関で行われているものです。

 

こちらは費用と年齢制限の問題はクリアしていますが、精度が下がるのが問題です。

 

的中率は8割程度で、しかも13トリソミーについてはわかりません。

従来からある出生前検査

新型出生前検査が注目を集めていますが、出生前検査自体は従来からあります。

 

ここでは新旧含めて全体像がわかるように手短にまとめました。

 

はじめに出生前検査の目的について再確認しておきます。

 

出生前検査の目的

  1. 胎児に先天異常や遺伝疾患がないか評価する
  2. 胎児の位置・向き・胎盤の異常の有無を確認する
  3. 胎児が元気か確認する

 

従来の出生前検査の種類

超音波検査(エコー)
  • 妊婦のお腹に超音波を当てて、中の様子をモノクロ画像で描出する
  • 胎児の形と動きをリアルタイムで確認できる
  • さらに循環系・代謝系など、体内のこともわかるようになってきている
  • 妊娠11〜13週目にこの方法で検査するNT(首の後ろが分厚くなっていること。先天異常の可能性を示す)の有無などは重要
胎児心音測定
  • 母体の腹壁を通して胎児の心音をチェックし、徐脈・不整脈・頻脈の有無を検査
  • 児心音、FHSとも言い、正常値は毎分120〜160
  • 妊娠12週以降はほぼ確実に聞き取れるようになる
トリプル(三重)マーカーテスト
  • 妊娠14〜18週に妊婦から採血して行う血液検査
  • 母体にも胎児にも負担がないが、精度が低い
  • この検査で異常が出たら、羊水検査に進む
羊水検査
  • 妊娠15〜18週に実施
  • 超音波でモニターしながら、腹部に針を刺して子宮内から羊水を採取
  • 成分検査、染色体分析、DNA診断などを行う
  • 精度が高い反面、流産を引き起こすリスクがある
絨毛検査
  • 絨毛という子宮内の組織を腹部に穿刺して採取し、検査する
  • 羊水検査より早い時期(10〜11週)でできるのがメリット
  • 羊水検査より流産の可能性が高いのがデメリットで、日本では実施は少ない

先天異常の種類と出生前検査

新型出生前検査が実施されて以来、ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーばかりが注目される傾向にあります。

 

確かに、この3つは先天異常の中で比較的発生率の高いものではあります。

 

しかし、先天異常の種類は極めて多く、この3つを避けられたら大丈夫というようなものではないのです。

 

日本で発生率の高い先天異常の例

心臓の欠陥 心室中隔欠損、心房中隔欠損など、心臓内の隔壁に穴が開いている異常
口唇・口蓋裂 いわゆる「みつくち」「兎唇」。鼻の下でウサギのように上唇が二つに分かれて、前歯が見えている状態
消化器官の未発達 食道閉鎖、十二指腸閉鎖、小腸閉鎖、鎖肛など。食道→胃→十二指腸→小腸→大腸→肛門とつながる消化器官のどこかが途切れたり塞がったりして、ちゃんと開通していない
耳の形態異常 耳介低位(耳の位置が低い)、耳介変形など
二分脊椎 背骨の一部が開いていて、くるまれているべき脊髄がむき出しになっている。歩行障害や排尿障害などが一生つきまとう。

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ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーは染色体異常ですが、染色体以外に起因する先天異常もたくさんあるのです。

 

また、染色体異常の中にも上記の3つ以外に性染色体の異常として、クラインフェルター症候群、ターナー症候群は比較的よく見られるものです。

 

染色体異常についての詳しい説明はコチラ

 

この章のポイント

  • 先天異常は発生率の高いものに絞っても、人工中絶が可能な時期に判定できるものは一部に過ぎない

検査を受ける前に考えておくべきこと

意思決定期間の短さ

まず、最初に頭に入れておかねばならないことは、出生前検査の結果で異常が出ても、中絶の是非を決めるのに許された時間は極端に短いということです。

 

まず、人工中絶の期限と検査の時期を確認しましょう。

 

人口中絶の期限
法的期限 22週未満

22週以降の人口中絶は違法であり、堕胎罪で懲役刑を科せられます。
医師も応じてくれません。
すなわち、22週以内であることは中絶の最低条件です。

安全期限 12週未満 12週以降は時が経つほどに母体の危険が増します。

 

出生前検査の時期
2014年春からの新型検査NIPT 10週以降 精度80〜90%。陰性の場合の信頼度は99%以上。高額。 検査のリスクなし
2014年秋からの新型検査 11週以降 精度80%程度。安価。 検査のリスクなし
絨毛検査 10〜11週 高精度 検査実施による流産のリスクやや高い
トリプルマーカーテスト 14〜18週 低精度 検査のリスクなし
羊水検査 15〜18週 高精度 検査実施による流産のリスクあり

 

上の2つの表を比較すると、熟考している余裕がないのがわかるはずです。

 

検査を実施して結果が出るまでの時間も含めると、安全に中絶できるタイムリミットはオーバーする可能性が高いです。

 

また、検査精度の低さも大きな問題です。

 

高い物でも精度は90%程度。

 

最初の検査で「もしかしたら?」という気持ちが残り、羊水検査などに進むと法的期限にも間に合わない可能性が出てきます。

 

もちろん意思決定が遅れるほど、母体のリスクは大きくなります。

 

この時間の余裕のなさを事前に理解し、「こうなった場合はこうする、ああなった場合はああする」ということを熟考して決めておくこと。

 

でないと、1週間2週間といった短期間での意思決定で地獄のように迷い苦しみ、その後も「もしかして間違えたのでは?」という疑いに苦しむことになります。

 

検査精度の限界に伴う問題

検査結果が確定的でないために、様々な問題が起こり得ます。

  • 異常の可能性が90%以上だったので、中絶を選択したが、もしかしたら元気な子だったのでは、と罪悪感に苦しむ。
  • 検査で異常がなかったので安心していたら、出産直前に染色体起源以外の異常の可能性を告げられた。
  • 受診する前は最初の検査で決めるつもりだったのに、実際にはできずに次の検査に進んでしまい、ハイリスクで法的期限にもギリギリ

 

受診しない場合の問題

一方、全く受診しない場合も覚悟は必要です。

 

次のようなことも考えられます。

  • 障害児が生まれた場合に、検査を受けていれば避けられたのでは?と後悔する。
  • 自分は納得しても、検査を受けなかったことを配偶者や相手の親に非難される。

 

倫理観と現実論の間の問題

命の大切さは言うまでもありませんが、障害とともに生きる子供と家族にはきれいごとで済まない現実があります。

  • 異常の可能性が高い場合に、割り切って中絶できるのか?
  • 一生自立できない障害児が生まれた場合、自分の経済事情等に照らして、育てきれるか?
  • 子供自身が自分の障害を受け入れて、人生を前向きに生きてくれるだろうか?

 

家族との関係

出生前検査の受診、障害児の出産と中絶という選択肢、こうしたことを巡って家族が意見一致できるかという問題があります。

  • 夫は障害児は受け入れられないというが、妻はどんな子でも産みたいと願う。
  • 姑が出生前検査の受診に猛反対している。

 

高齢出産との関係

先天異常の発生率が年齢とともに高まるのは事実です。

 

だから出生前検査が問題になるのは、高齢出産の場合が中心。

 

しかし高齢出産ゆえの事情が悩みをより深いものにしています。

 

  • 長い間待ってやっと授かった子を、異常が100%確定でないのに見切れるか?
  • これまで多額の費用を不妊治療に費やしている。
  • 自分にとってはおそらくこれが最後の妊娠機会かもしれない。

 

家族以外の周囲との関係

出生前検査に否定的な人も世間にはたくさんいます。

 

異常があった場合の中絶という選択肢に対して、「命の選択」と激しく非難する人もいます。

 

受診のことを話した後に流産となった場合、自然流産であっても中絶を選択したと噂を流されるような危険もあります。

 

どの範囲の友人・知人にどんなふうに話すのかも、事前によく考えておいたほうがよいでしょう。

 

以上のようなことを早い時期からよく考え、配偶者とよく相談して、見解を一致させて臨むべきです。

 

色々な考え方があり、正解はひとつではなく、一家族一家族で違うと思います。

 

後悔のない選択をしていただくうえで、当サイトの情報が少しでもお役に立てれば幸いです。